懐風堂日誌

同人サークル・少年迷路主宰 五戸燈火の日記

十月二十九日。

快晴。真昼の空に雲の一片だにも見えず。

去る二稔ばかり、流行り病の勢ひ猖獗を極めたりけるが、何事にも永続たるはなく、又人も馴れるが世の常なれば、近頃各地にて行事の再開多かるべし。此の週末も異ならず、神田古本まつりの三稔ぶりの開催の由、聞き及びて、午より地下鉄に乗りて神保町に至り、所狭しと見せ棚の連なりたる歩道の上を、掘出し物を求めて四方八方より出来たる人々に揉まれつ、余も等しく目を凝らし居並ぶ背表紙を睨まえつつ歩きけり。前回開催の折は、買ふべきものの多く見出しけるが、今年はただ一冊のみなりぬ。さばれ、自らの脚もて歩き、物を探す愉しみは二つとなきものなるべし。