懐風堂日誌

同人サークル・少年迷路主宰 五戸燈火の日記

読書

【読了】ロナルド・A・ノックス『陸橋殺人事件』創元推理文庫

ついにこの作品と向き合うことになってしまったと、本書を手に取っただけでとても感慨深い思いを抱いたものだった。本書の作者ロナルド・A・ノックスといえば「ノックスの十戒」を書いた人物としてそれなりに広く知られていると思う。同様の探偵小説の掟のよ…

【読了】伊井圭『啄木鳥探偵處』創元推理文庫

2020年春、つまり来月から始まるテレビアニメ「啄木鳥探偵處」の、本書は原作である。歌人・石川啄木と言語学者・金田一京助のコンビが活躍する本格ミステリーの連作短編だ。第1話目の「高塔奇譚」は1996年の第3回草原推理短編賞受賞作で単行本の刊行は1999…

【読了】仁木悦子『私の大好きな探偵』ポプラ文庫ピュアフル

推理小説の過去の名作を知りたいとき、手っ取り早いのは長く続いている賞の受賞作・候補作一覧を参照することだろう。江戸川乱歩賞もその歴史は長く、第3回からは公募した長編小説から選ばれるようになり、推理小説ジャンルの新人賞的な位置づけとなっている…

【読了】ドロシー・L・セイヤーズ『大忙しの蜜月旅行』創元推理文庫

古典黄金時代を代表する女流作家、ドロシー・L・セイヤーズによるピーター・ウィムジイ卿ものの第11長編であるBusman's Honeymoonの翻訳がようやく創元推理文庫から刊行された。ようやく。まさしく、ようやく! ピーター卿が活躍する一連の長編作品は1993年…

【読了】鮎川哲也編『硝子の家 本格推理マガジン』光文社文庫

島久平「硝子の家」という作品のことを初めて目にしたのは確か二階堂黎人先生の二階堂蘭子シリーズのなかでだったような気がする。同シリーズでは過去の有名無名推理小説が数多く引用され、ある種の参考書のような様相を呈するものまであるが、「硝子の家」…

【読了】沼正三『禁じられた青春(上)』幻冬舎アウトロー文庫

『家畜人ヤプー』の著者である沼正三とは誰であるか――。覆面作家・沼正三の正体については諸説あるようで、Wikipediaのページにも議論のあることが書かれている。現在この説がどういう扱いになっているのかはこれ以上調べていないのでわからないが、沼正三の…

【読了】霧舎巧『マリオネット園』講談社文庫

第12回メフィスト賞受賞作『ドッペルゲンガー宮』にはじまる《あかずの扉》研究会シリーズの第4長編にして現時点で刊行されている最新作が本書『マリオネット園』だ。最新作とはいってもノベルス版の刊行は2001年だからおよそ20年前の作品ということになる。…

【読了】ドロシー・L・セイヤーズ『死体をどうぞ』創元推理文庫

本書は1932年に発表されたピーター・ウィムジィ卿シリーズの第7長編である。シリーズ中では『学寮祭の夜』に次ぐボリュームを誇る大長編で、セイヤーズの作風と推理小説の神髄を存分に味わうことができる傑作だ。 死体をどうぞ (創元推理文庫) 作者:ドロシー…

【読了】眉村卓『なぞの転校生』講談社文庫

本作はライトノベルという用語が定着する以前、青少年向けの文芸作品を指すジャンルとしてジュブナイルという用語が使われだした頃の代表的な作品である、というのが私の理解だ。ジュブナイルの歴史については詳しくないのでこれ以上なにもいえない。1965年…

【読了】竹本健治『狂い壁 狂い窓』講談社文庫

本年のミステリ始めは竹本健治先生『狂い壁 狂い窓』。1983年に発表された本作はタイトルにもその雰囲気が滲み出しているように、ホラーミステリーともいうべきどこか妖しくも懐かしき幻想世界を満喫できる作品である。 狂い壁 狂い窓 (講談社文庫) 作者:竹…

【読了】津原泰水『11 eleven』河出文庫

私の読書範囲の大半は長編推理小説が占めているが、他にも読みたいジャンル、作家は山積みである。そんな積読の山の上の方にあったのでようやく手にとった。津原泰水先生の作品を読むのは初めてだった。 11 eleven (河出文庫) 作者:津原 泰水 出版社/メーカ…

【読了】ハワード・グッドール『音楽の進化史』河出書房新社

音楽の進化史 作者:ハワード グッドール 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2014/05/14 メディア: 単行本 イギリス出身の作曲家、ハワード・グッドール氏による本書『音楽の進化史』は、西洋音楽、いわゆるクラシック音楽を中心とした音楽の歴史を、先…

【読了】笠井潔『熾天使の夏』創元推理文庫

笠井潔先生のライフワーク「矢吹駆シリーズ」の第ゼロ作と位置づけられる本書。これまでのシリーズのなかではあまり明かされてこなかった矢吹駆の来歴や内面世界が本書によってある程度明らかになる。『バイバイ、エンジェル』に始まるシリーズにおいては、…

【読了】綾辻行人『びっくり館の殺人』講談社文庫

久々に、大好きな綾辻行人センセの作品を読了した。館シリーズの第8作目『びっくり館の殺人』である。以下、悪趣味な探偵小説愛好家の感想というか戯言である。 びっくり館の殺人 (講談社文庫) 作者: 綾辻行人 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2010/08/12 …

【読了】山田正紀『カムパネルラ』創元SF文庫

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』といえば、文学方面だけにとどまらずあらゆる創作ジャンルに甚大な影響を与え続けている不朽の大傑作である、というのは当たらずといえども遠からず、あながち間違ってはいないのではないか、くらいのところが僕の認識だ。回りくど…

【読了】A・A・ミルン『赤い館の秘密』創元推理文庫

創元推理文庫の創刊60周年を記念した「名作ミステリ新訳プロジェクト」の第3弾として『赤い館の秘密』の新訳版が先月発売された。作者はくまのプーさんの生みの親として有名なA・A・ミルン。戦前英米本格推理小説黄金時代の初期の代表作として、おそらく後世…

【読了】エリー・アレグザンダー『ビール職人の醸造と推理』創元推理文庫

まずは表紙を見てほしい。これが全てを物語っている。新ジャンル、クラフトビール・ミステリーといったところだろうか。ミステリ好きかつビール好きの僕としては思わず手に取らずにはいられなかった。 ビール職人の醸造と推理 (創元推理文庫) 作者: エリー・…

【読了】小栗虫太郎『二十世紀鉄仮面』河出文庫

来月、2019年5月上旬に、河出文庫から『法水麟太郎短編全集』という新刊の発売が予定されている。詳しい情報や書影などはまだ公開されていないようだが、おそらくKAWADEノスタルジック<探偵・怪奇・幻想シリーズ>に連なるものかと思われる。小栗虫太郎とい…

【読了】『世界推理短編傑作集4』創元推理文庫

世界推理短編傑作集4【新版】 (創元推理文庫) 作者: 江戸川乱歩 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2019/02/12 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 江戸川乱歩が編んだ『世界短編傑作集』の新版の刊行も残すところあと1巻となった。第4巻目となる…

【読了】クロフツ『クロイドン発12時30分』創元推理文庫

創元推理文庫の創刊60周年を記念した名作ミステリ新訳プロジェクトが熱い。古典ミステリオタクが渇望してやまないもの、それは新訳。と言うとちょっと言い過ぎだろうか。かつて読んだ旧いバージョンももちろん忘れがたいものだが、装丁やデザインが新しくな…

【読了】青崎有吾『体育館の殺人』創元推理文庫

ずっと気になっていた作品でした。青崎有吾先生『体育館の殺人』を読了しました。 体育館の殺人 (創元推理文庫) 作者: 青崎有吾 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2015/03/12 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る 本書は2012年の第22…

【読了】甲賀三郎『蟇屋敷の殺人』河出文庫

古い時代の探偵小説好きにはタマラナイ作品です。甲賀三郎『蟇屋敷の殺人』を読了しました。 蟇屋敷の殺人 (河出文庫) 作者: 甲賀三郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2017/05/08 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 甲賀三郎といえば、木々…

【読了】似鳥鶏『理由あって冬に出る』創元推理文庫

冬、ですね。冬らしいものを。似鳥鶏先生『理由あって冬に出る』を読了しました。理由と書いて「わけ」と読むのはSideMと同じです。関係はもちろんありません。 理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫) 作者: 似鳥鶏 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: …

【読了】梓崎優『叫びと祈り』創元推理文庫

最近は古い推理小説を読むことが多かったのですがちょっとひさしぶりに現代ミステリを。梓崎優先生のデビュー作『叫びと祈り』読了しました。 叫びと祈り (創元推理文庫) 作者: 梓崎優 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2013/11/29 メディア: 文庫 この…

【読了】ドロシー・L・セイヤーズ『ナイン・テイラーズ』創元推理文庫

あらためまして、新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 さて皆さん、新年初読みはいかがだったでしょうか? 私が2019年の1冊目に選んだのはセイヤーズの不朽の大傑作『ナイン・テイラーズ』でした。はじめて読んだのは5年…

創元推理文庫『世界推理短編傑作集3』読了

古い探偵小説が現在でも気軽に読めるというのはなんて驚異的なことだろうか。それも海外の100年近くも昔の作品が日本語で読めるというのは。 世界推理短編傑作集3【新版】 (創元推理文庫) 作者: 江戸川乱歩 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2018/12/20 …

【読書】今年読んだ本を振り返る【2018】

自分のなかでのコミケも終わって、いよいよ年の瀬、長かった2018年もそろそろカーテン・フォール。なにかと振り返ることが多い時期ですが、自分の場合はやはり読書。今年はなにを読んだっけか。正直いうともうほとんど覚えてません。読んだはしから忘れてい…

坂口安吾『不連続殺人事件』(新潮文庫)読了

※本稿には『不連続殺人事件』のネタバレが含まれる可能性があります。注意散漫の状態では読まれないことをオススメします。 3回目くらいの読了、だと思われる。私の記憶に間違いがなければ。 初めて読んだのはたしか角川文庫版で、読書メーターの記録による…

第59回東京名物神田古本まつりに行ってきた。

前回の記事の続きのようなものですね。ブックフェスティバルの裏でも開催されていた古本まつり。こちらは開催期間も長くて10月末からおとといの日曜日まで約1週間やっていたもの。ブックフェスティバルに行ったときは古本まつりを見て回る(金銭的な)余裕が…

第28回神保町ブックフェスティバルに行ってきた。

といっても、もう先週末の話なのでとてもいまさらな感じですが、とりあえず軽くまとめます。 読書の秋に、本の街・神保町で開催される、年に一度のお祭り。公式サイトによると「在庫点数300万点 在庫冊数1000万冊 売場面積5000坪」とのこと。大手から中小ま…