懐風堂日誌

同人サークル・少年迷路主宰 五戸燈火の日記

八月三十一日。

曇。湿気の多かる日なり。終日除湿機を動す。

本日にてとらのあな秋葉原店閉店との由を聞て、午過ぎに訪ふ。狭きビルの階梯を、薄き本を求めて上り下りするも、これにて最後ならんとこそ思へばなんとも寂しけれ。余の知りたる秋葉原といふ街も、はや彼方になりつあり。もはやそこに紙風船なければ、メディオもなし、トライアミューズメントタワーも去り、キッチンジローも消え、かんだ食堂も閉じにけり。この上とらのあなまでなくなりたる歟。世相の変転。十年一日の感。とらのあななき秋葉原を、余は未だ嘗て知らず。後来、懐郷の念、何処にか往かん。

八月三十日。

曇。時々細雨降りたり。

ペヤングの新作の発売せるを見て購ふ。うどんそば風との由なるも、使はれたる麺が抑も別物なれば、もはや、やきそばの影も形もなくなりたるこそ面白けれ。作りし時、乾燥若布を含みたる先入れ加薬を入れ忘れたれば、仕方なしに固いままにて食ひぬ。こはこれで、悪しからず、といふには及ばず。乾燥若布の如きは須らく戻して食ふものなるべし。

八月二十八日。

雨。涼しくて過ごしやすき日なり。

午頃、雨止みたるを見て図書館へ往かんと出るも、自転車に乗りて少時走るほどに、復た雨降り出し忽ち豪雨となりて、避ける術のなかりせば、屋根を得る頃には濡れ鼠となりぬ。忌々しき雨男なるかな。

多年使ひし塵芥箱の蓋なる撥条機構壊れつ。新しきを探すも未だ良きもの見つからず。

夜、近隣を漫歩せるに、ドラマの撮影現場に遭遇す。余の東京に住みて永年を経たるが、ドラマの撮影の如きを見しことは嘗てなかりき。機材、人員の数多ければ、可也な予算を組みたる企画ならんや。