懐風堂日誌

同人サークル・少年迷路主宰 五戸燈火の日記

小栗虫太郎『紅殻駱駝の秘密』、読了。

 河出文庫がまたやってくれた! 近年、古き探偵小説を続々と復刊させているKAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ。小栗虫太郎作品は『黒死館殺人事件』『二十世紀鉄仮面』『人外魔境』に次いで4作目ですね。この時代に新しい文庫で戦前の探偵小説が読めるとは、なんという贅沢、嬉しい限りです。

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 書影はこちら。いかにもノスタルジックな蒸気機関車の写真。オビの謳い文句にもあるように、黒死館以前に書かれた1作目の長編ですね。ただ、発表されたのは黒死館の方が先のようです。

 紅殻駱駝とはいったい何なのか、あるいは何者なのか。その秘密にからむ殺人事件を追っていくのが本作の流れです。しかしそこは小栗虫太郎、すんなりとは読ませてくれないのが憎いところ笑。そもそもの事件の発端が講釈という形で語られ、次いで事件の進展が演劇という形で語られる。前半はこういった作中作のような趣向を交えつつ探偵役・尾形修平と相棒・小岩井警部の捜査が進んでいきます。まぁ面白いんだけどなかなか読みづらいのなんのって。雰囲気は抜群ですが。

 とはいえ、本作は黒死館ほど衒学に満ちているわけではなく、話の筋もわかりやすいです。もちろんそこは小栗虫太郎なので、本作の尾形修平も法水麟太郎同様の饒舌と衒学趣味を発揮してくれますのでご安心を。我々読者は「またまた、いつもの気狂い染みた論理を聴かされるのか!?」と叫んだ小岩井警部に喝采を送ることになるでしょう。それもまた小栗虫太郎作品の醍醐味ですね。